H-RISE 公益財団法人北海道科学技術総合振興センター 幌延地圏環境研究所

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研究紹介地下微生物環境研究グループ
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世界初!石炭層に分布するメタン生成微生物群の解明(2007 年)

2007.04.01

はじめに

2007年以前、石炭層に分布する微生物の種組成に関する報告は皆無であり、わたし達が北海道の石狩炭田で行った研究が世界で初めて発表された学術論文となりました。さらに、わたし達がこの時研究フィールドとした石狩炭田夕張地域はCO2-ECBM (CO2の炭層隔離により炭層メタンの回収増進を目指した事業)実証サイトでもあったことから、わたし達の論文は世界で初めてのCCS(Carbon dioxide Capture and Storage: 二酸化炭素の地中隔離)サイトにおける微生物研究ということでも国内外の多くの研究者の関心を集めたようで、引用文献として多くの学術論文に利用していただいています。

明らかになったこと

 このとき、わたし達は炭層メタン生産井(採水深度843.1-907.0 m)から得られた地下深部の瀝青炭層の地層水についてどのような微生物が存在しているのか調査を行いました。

炭層地層水中からはメタン生成に関わる微生物群集の遺伝子(16S rRNA遺伝子)が検出され、遺伝子解析により構築された古細菌の遺伝子ライブラリーは驚くべきことに90%がメタン菌の系統で占められていました。その内訳は、CO2基質型(4H2+CO2→CH4+2H2O)のメタン菌が53.4%,メチル化合物基質型(CH3OH+H2→CH4+H2)あるいは酢酸基質型(CH3COO-+H2O→CH4+HCO-3)の系統が36.7%を占めていました。

一方、真正細菌ではメタン菌との共生あるいは共存が報告されているホモ酢酸生成微生物およびSyntrophus属が優占しており,メタン生成に関わる微生物集団の存在が強く示唆されました。

さらに、炭層の地下水からのメタン生成微生物の培養にも成功しました。この時に生け捕りにしたメタン生成微生物群は現在も私達の実験室で生きています。

CCSへの微生物影響は?

 地下に試験的に貯留された二酸化炭素や窒素の微生物影響についてですが、二酸化炭素については、プロジェクト期間内に炭層メタン生産井に到達しなかったため明らかにできませんでしたが、窒素ガスについては比較的短期間で生産井に達したため、大変興味深いデータを得ることができました。これらのことも含め詳細を知りたい方は是非、下記の論文を読んでみて下さい。

国際学術誌に発表した論文

Shimizu S, Akiyama M, Naganuma T, Fujioka M, Nako M, Ishijima Y (2007) Molecular characterization of microbial communities in deep coal seam groundwater of northern Japan. Geobiology 5:423-433.

今後の展望

 この研究をとおして、中温域の地下のメタン生成環境である夕張石炭層の微生物と私達のメイン研究フィールドである珪藻岩層の微生物にはいくつか共通点があることがわかりました。現在は、地元の天北炭田を研究フィールドに研究を発展的に進めており、石炭層における微生物学的メタン生成プロセスを珪藻岩層と対比しながら解明を進めています。これらの研究成果は、地下の珪藻岩層はもとより、北海道北部に位置する日本最大の褐炭層(天北炭田)のメタンガス鉱床化を目指して行われています。

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