H-RISE 公益財団法人北海道科学技術総合振興センター 幌延地圏環境研究所

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研究紹介地下微生物環境研究グループ
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新種メタン菌Methanosarcina horonobensis 発表(2011年)

2011.09.30

概要

幌延珪藻岩の地層(稚内層:珪質頁岩)に棲息しているメタン生成微生物を捕獲して発表しました。種名にはこの微生物が獲れた地名(幌延:ホロノベ)に因んでhoronobensis(ホロノベンシス)と命名しました。

国際学術誌に発表した論文

Shimizu S, Upadhye R, Ishijima Y, Naganuma T (2011) Methanosarcina horonobensis sp. nov., a methanogenic archaeon isolated from a deep subsurface Miocene formation. International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology 61:2503–2507.

この微生物の特徴

この微生物の特徴は以下のとおりです。
1. 単離源:地下296mの地下水(HDB-6 孔)
2. ドイツおよび日本のカルチャーコレクションに寄託・公開されている
3. 生理学的特徴:メチル化合物および酢酸からメタンをつくる
4. 珪藻質岩層(稚内層)で2番目に主要な遺伝子タイプとの一致率は99.9%

注目すべき点

 しかし、この論文のすごいところは、なんといっても珪藻岩の地層中の微生物遺伝子ライブラリーで2番目に主要な微生物を生け捕りに出来た点です。通常、環境中で培養できる微生物は1%未満であるといわれており、だからこそ培養を介さない方法、すなわち遺伝子を直接調べる方法で、その環境にどんな微生物が存在しているのかを明らかにしています。しかし、その環境中の微生物の種組成を明らかにしたところで、お目当ての微生物を生け捕りすることはほとんど奇跡でも起きない限り無理といわれているくらい難しいのです。わたし達は、幸運にもお目当ての微生物をゲットできたといえます。

今後の展望

 次のステップですが、さらに詳しく性質を調べて幌延珪藻岩の地層内のメタン生成プロセスの解明に役立てたいと考えています。なお、この微生物のゲノム(全遺伝子)は理化学研究所のJCMで解析していただいています。近いうちに公開されると思います。