幌延ライズとは
公益財団法人
北海道科学技術総合振興センター
H-RISE 幌延地圏環境研究所
〒098-3221
北海道天塩郡幌延町栄町5番地3
TEL 01632-9-4112
FAX 01632-9-4113
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平成30年度
第二期長期計画期間は平成24年度からの9年間であり,3年単位の三つのフェーズ(フェーズ4〜6)ごとに中期的目標が設定されている。フェーズ6(2018〜2020年度)では,道北地域の堆積岩を対象として地層内バイオメタンの生成プロセスとその制御方法を解明するとともに,本研究所が提案したSCG法(Subsurface Cultivation and Gasification; バイオメタン鉱床造成/生産法)の適用性を検討して,その改善点を抽出することを目標としている。なお,SCG法は「地層中に含まれる石炭および/または珪藻岩からメタンガスを地層中において製造する方法 (特許6396068)」 として平成30年9月に特許登録されている。
平成30年度(2018年度)はフェーズ6の初年度であり,地下微生物環境研究グループ・地下水環境研究グループ・堆積岩特性研究グループのそれぞれにおいて上記目標達成のための研究を実施した。今年度の研究と成果の概要は以下のようである。
地下微生物環境研究グループでは,JAEA幌延URLより採取した地下水を用い,珪藻泥岩層中のメタン生成に関与する微生物群およびその機能の解明に関する研究を継続して行った。各種基質添加による培養実験を行い,140m坑道と250m坑道から採取した地下水中の微生物では,メタン生成基質の使い方に違いがあることを明らかにするとともに, 過去に採取した地下水より,新規微生物であるHJ250株の取得に成功した。培養モデルに関しては, SCG法の原位置適用を想定した研究として,H-RISE微生物群の代わりに猿払25-2孔地下水の微生物を用い,褐炭と過酸化水素反応後の溶液からのメタン生成について検証実験を行った。H-RISE微生物群を用いた実験と比較し,メタン生成開始までの時間を要するが,猿払25-2孔地下水中の微生物を用いてもメタン生成が可能であることが分かった。この結果は,次年度以降のSCG原位置試験の設計において重要な示唆を与えている。さらに,地層内のメタン根源物質の分解実験の一環として行ってきた腐植物質分解微生物群と,効率的なメタン生成に関する研究として用いてきたH-RISE微生物群を用いた研究を統合し,上記二つの微生物群を共培養することによりメタン生成を試みた結果,期待通りにメタン生成が確認され,嫌気条件下において,微生物の作用により腐植物質からメタン生成が可能であることが検証された。
地下水環境研究グループでは,天然における微生物起源メタンの生成メカニズムやそのヨウ素との関係性の解明を目的に,複数のフィールドの地下水を対象として研究を実施した。釧路コールマインでは,炭層中の亀裂を充填するカルサイトを対象として同位体顕微鏡システムによる分析を実施し,微生物起源メタンの生成環境で本カルサイトが析出したことを明らかにした。猿払地区および浜里地区では,それぞれのボーリング孔から採取した地下水,岩石抽出水および岩石のヨウ素・臭素の定量分析を実施した結果,現在の地層中においてヨウ素は地層構成物質と吸着平衡状態にあることが示唆された。また,石炭の電子供与能やヒドロキシラジカルの生成ポテンシャルを持つ鉄(Fe)の存在が石炭と過酸化水素との反応性に与える影響を明らかにするため,フェノール等と過酸化水素との反応試験や,電子供与能を減少させた褐炭およびFe含有量を減少させた褐炭と過酸化水素との反応試験などを実施した。これらの結果から,過酸化水素とFeの反応で生成するヒドロキシラジカルはラジカル開始剤として機能し,石炭の分解自体は有機骨格のラジカル連鎖反応で進行していることが推測された。さらに,Feの化学形態分析では,石炭中のFeは主にフミン酸に吸着,黄鉄鉱および硫酸鉄の形態で存在することが示唆された。
堆積岩特性研究グループでは,次年度以降のSCG原位置試験の準備として以下の研究を実施した。まず,原位置褐炭層の透水性とその変化を評価するために,高精度水位観測法に関する現場試験を実施した。既存の猿払25-1孔の約50m深度に投入型圧力計を設置して連続計測を実施した結果,圧力計出力には変動が認められたが,大気圧データを考慮して補正すれば水位変動はほとんどないことが確認され,SCG原位置試験において,高精度水位観測が可能となった。次にSCG原位置試験では,褐炭層への過酸化水素注入において,発生した気体が透水性を低下させる可能性があることから,この現象を把握するための室内実験を実施した。本年度は室内試験法およびそのシステム構築を目的として,瀝青炭を用いて,純水および高濃度過酸化水素水溶液の注入試験を実施した。具体的には,原位置き裂系を再現するために,円柱形供試体の周方向変位を制御して破断面を形成し,この状態で注入試験を実施した。その結果,過酸化水素5%水溶液を注入すると,純水の場合に比較して透水性が二桁以上低下することが観測され,過酸化水素水溶液の注入では水溶液濃度の制御が重要であることが確認された。本年度は限られた条件で試験を実施したが,石炭への過酸化水素注入の室内試験法およびそのシステムが確立されたと考えている。
平成30年度(2018年度)はフェーズ6の初年度であり,地下微生物環境研究グループ・地下水環境研究グループ・堆積岩特性研究グループのそれぞれにおいて上記目標達成のための研究を実施した。今年度の研究と成果の概要は以下のようである。
地下微生物環境研究グループでは,JAEA幌延URLより採取した地下水を用い,珪藻泥岩層中のメタン生成に関与する微生物群およびその機能の解明に関する研究を継続して行った。各種基質添加による培養実験を行い,140m坑道と250m坑道から採取した地下水中の微生物では,メタン生成基質の使い方に違いがあることを明らかにするとともに, 過去に採取した地下水より,新規微生物であるHJ250株の取得に成功した。培養モデルに関しては, SCG法の原位置適用を想定した研究として,H-RISE微生物群の代わりに猿払25-2孔地下水の微生物を用い,褐炭と過酸化水素反応後の溶液からのメタン生成について検証実験を行った。H-RISE微生物群を用いた実験と比較し,メタン生成開始までの時間を要するが,猿払25-2孔地下水中の微生物を用いてもメタン生成が可能であることが分かった。この結果は,次年度以降のSCG原位置試験の設計において重要な示唆を与えている。さらに,地層内のメタン根源物質の分解実験の一環として行ってきた腐植物質分解微生物群と,効率的なメタン生成に関する研究として用いてきたH-RISE微生物群を用いた研究を統合し,上記二つの微生物群を共培養することによりメタン生成を試みた結果,期待通りにメタン生成が確認され,嫌気条件下において,微生物の作用により腐植物質からメタン生成が可能であることが検証された。
地下水環境研究グループでは,天然における微生物起源メタンの生成メカニズムやそのヨウ素との関係性の解明を目的に,複数のフィールドの地下水を対象として研究を実施した。釧路コールマインでは,炭層中の亀裂を充填するカルサイトを対象として同位体顕微鏡システムによる分析を実施し,微生物起源メタンの生成環境で本カルサイトが析出したことを明らかにした。猿払地区および浜里地区では,それぞれのボーリング孔から採取した地下水,岩石抽出水および岩石のヨウ素・臭素の定量分析を実施した結果,現在の地層中においてヨウ素は地層構成物質と吸着平衡状態にあることが示唆された。また,石炭の電子供与能やヒドロキシラジカルの生成ポテンシャルを持つ鉄(Fe)の存在が石炭と過酸化水素との反応性に与える影響を明らかにするため,フェノール等と過酸化水素との反応試験や,電子供与能を減少させた褐炭およびFe含有量を減少させた褐炭と過酸化水素との反応試験などを実施した。これらの結果から,過酸化水素とFeの反応で生成するヒドロキシラジカルはラジカル開始剤として機能し,石炭の分解自体は有機骨格のラジカル連鎖反応で進行していることが推測された。さらに,Feの化学形態分析では,石炭中のFeは主にフミン酸に吸着,黄鉄鉱および硫酸鉄の形態で存在することが示唆された。
堆積岩特性研究グループでは,次年度以降のSCG原位置試験の準備として以下の研究を実施した。まず,原位置褐炭層の透水性とその変化を評価するために,高精度水位観測法に関する現場試験を実施した。既存の猿払25-1孔の約50m深度に投入型圧力計を設置して連続計測を実施した結果,圧力計出力には変動が認められたが,大気圧データを考慮して補正すれば水位変動はほとんどないことが確認され,SCG原位置試験において,高精度水位観測が可能となった。次にSCG原位置試験では,褐炭層への過酸化水素注入において,発生した気体が透水性を低下させる可能性があることから,この現象を把握するための室内実験を実施した。本年度は室内試験法およびそのシステム構築を目的として,瀝青炭を用いて,純水および高濃度過酸化水素水溶液の注入試験を実施した。具体的には,原位置き裂系を再現するために,円柱形供試体の周方向変位を制御して破断面を形成し,この状態で注入試験を実施した。その結果,過酸化水素5%水溶液を注入すると,純水の場合に比較して透水性が二桁以上低下することが観測され,過酸化水素水溶液の注入では水溶液濃度の制御が重要であることが確認された。本年度は限られた条件で試験を実施したが,石炭への過酸化水素注入の室内試験法およびそのシステムが確立されたと考えている。