幌延ライズとは
公益財団法人
北海道科学技術総合振興センター
H-RISE 幌延地圏環境研究所
〒098-3221
北海道天塩郡幌延町栄町5番地3
TEL 01632-9-4112
FAX 01632-9-4113
北海道科学技術総合振興センター
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北海道天塩郡幌延町栄町5番地3
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長期ビジョン(2021年~2028年)
基本方針
重点研究項目
科学技術研究では、将来を見据えた研究計画策定が不可欠である。そこで、2021年度(令和3年度)からの8年間の研究計画では、近未来として2030年を展望し、2030年代に必要となる研究シーズの開拓と新技術の開発を目指すことにした。まず、2030年に向けた研究シーズの開拓に関する具体的目標は、「沿岸域を含む道北地域の地下環境の解明と資源探索」であり、このために二つの重点課題、「地下微生物生命圏の解明と微生物資源の探索」と「地下環境の解明と未利用・有用資源の探索」を設定する。また、2030年に向けた新たな技術の開発に関する具体的目標・重点課題として「地下バイオメタン生産法の実用化研究」を設定する。研究計画の理念
- 背景となる研究成果
これまでの一連の研究成果のうち、本研究計画の背景となる研究成果を示す。-
地下微生物に関して:
深地層研究センター地下施設を活用するとともに嫌気環境サンプリング手法を開発し、地下微生物が継続的に採取可能な複数のサンプリングサイトを運用している。これら世界的にも貴重な研究環境を活用して、すでに、4種の新種微生物(メタン菌3種、硫酸還元菌1種)を発見し、それらの機能を解明した上で国際登録している。さらに、メタン生成や有機物分解などの優れた機能を有する微生物の継代培養に成功するなど、地下微生物に関する豊富な研究業績と分析ノウハウを有している。
- 地下水環境に関して:
道北地域の地下水の水質・同位体分析により、当地域の地下水中には高濃度のメタンガスが溶存していること、これらメタンガスは微生物(メタン菌)により生成されたバイオメタンであること、などを明らかにしている。これらバイオメタン資源の発見とともに、地下におけるバイオメタンの生成環境・生成プロセスを解明し、その工学的応用法を提案している。さらに、地下水中溶存物質の分析により、道北地域堆積岩層にヨウ素資源が存在することを発見している。 - バイオメタン生成法に関して:
上記基礎研究の成果を元に、メタン菌を利用して地層中の有機物からバイオメタンを生産する方法(SCG法)を提案し、本手法に関する特許を取得している。そして、過酸化水素水による地層中難分解性有機物の分解からメタン菌による分解生成物からのメタン生成、までの一連のプロセスに関する研究を実施して、基礎データと技術的ノウハウを集積している。さらに、企業との共同研究により天北炭田褐炭層を対象としてSCG法の原位置試験を実現し、現象の検証とともに実用化のための課題を明らかにしてきている。
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地下微生物に関して:
- 地域としての特色
- JAEA深地層研究センターの活用:
国内唯一の地層処分研究施設であるJAEA深地層研究センターは、サンプルの収集や原位置試験を実施する上でも貴重な施設であり、これまで共同研究等で培ってきた信頼関係をベースに、引き続き活用を図る。 - 褐炭層および泥炭層の分布:
道北地域の褐炭層(天北炭田)は、北海道の推計によれば約20億トン賦存している。これら低品位な褐炭を微生物によりバイオメタンに変換することで、未利用資源の資源化に繋げることができる。さらに、道北地域西部に広く分布する泥炭は、環境負荷が大きく利用困難な地盤材料(いわゆる厄介者)であり、その資源化などの有効利用が望まれている。 -
高濃度メタンガスを含む堆積岩層の分布:
道北地域の堆積岩層に存在する地下水には、高濃度のメタンガスやヨウ素が含まれていることが明らかとなっている。道北地域の地下には、これら資源の他にも未利用有用資源存在の可能性が指摘されている。
- JAEA深地層研究センターの活用:
- 外部研究機関との連携
JAEA深地層研究センターをはじめ、微生物・地下水・資源工学などの研究で実績のある産業技術総合技術研究所等の研究機関、北海道大学や広島大学等との連携により、柔軟で多角的な研究を行なう。
期待される波及効果
- 高いメタン生成機能、難分解性物質の分解機能、二酸化炭素の固定機能、有機物生産機能など工学的に有用な機能を有する地下微生物が探索され、それらの生態学的機能の解明が期待される。これらの新たな研究シーズは、未利用難処理資源の有効利用、地球炭素循環における地下環境の影響評価、温室効果ガスの抑制と脱炭素化技術など新たな科学技術展開への貢献が期待できる。さらに、我が国の遺伝子資源戦略への貢献も期待できる。
- 道北地域の地下水モデル、泥炭の資源化技術、ヨウ素など水溶性資源の分布と成因など道北地域の地下環境とその特性の解明が期待される。これらの研究シーズは、地下水環境の工学的応用、未利用資源の有効利用、など新たな技術展開への貢献が期待できる。
- バイオメタン生産の設計・施工・制御法が確立されると、道北地域に豊富に存在する褐炭などの未利用資源からバイオメタンが生産され、地域エネルギーとしての有効利用が期待される。さらに、バイオメタン生産技術の海外展開及び技術移転により、未利用資源の有効利用と環境負荷の低減に関する国際貢献が期待できる。
注*)高度嫌気環境サンプリング:
地下は嫌気状態(酸素がない状態)にあるから、地下水や岩石は酸素(空気)に触れないように採取・分析する必要がある。