幌延ライズとは
公益財団法人
北海道科学技術総合振興センター
H-RISE 幌延地圏環境研究所
〒098-3221
北海道天塩郡幌延町栄町5番地3
TEL 01632-9-4112
FAX 01632-9-4113
北海道科学技術総合振興センター
H-RISE 幌延地圏環境研究所
〒098-3221
北海道天塩郡幌延町栄町5番地3
TEL 01632-9-4112
FAX 01632-9-4113
平成26年度
フェーズ4は研究の立ち上げとともに長期的な研究の方向性を確立させることを主目標とした。特に,地層内メタン生成に関する研究に顕著な展開が認められたことから,二つの研究課題のうち地層内メタン生成の研究を重点的に実施することとし,道北地域に広く分布する珪質岩・褐炭等の堆積岩を対象として地層内バイオメタンの生成プロセスとその制御方法および評価手法を検討して,原位置モデルの開発に資するパラメータを抽出することを目標として研究を実施してきた。以上の経緯から,平成26年度は,地下微生物環境研究グループ・地下水環境研究グループ・堆積岩特性研究グループのそれぞれにおいて地層内バイオメタン生成に関してフィールド科学と要素技術開発に関する複数の研究課題を設定して研究を実施してきている。平成26年度の研究の概要は以下のようである。
地下微生物環境研究グループでは,地下のメタン生成環境の生物学的な初期状態把握のために,日本原子力研究開発機構幌延深地層研究センター地下施設(以下,幌延URLと略称)工事の進捗に合わせて主に声問層(珪質岩)の地下水試料の微生物群集構造解析を網羅的に実施し,声問層では水素を生成する微生物と水素からメタンまたは酢酸を生成する微生物が高頻度に存在することを明らかにした。また,原位置を模擬した培養モデルを用いて幌延URLから採取した地下水の長期培養試験を行い,上記の水素を基質として酢酸あるいはメタンを生成する微生物の培養が可能であることを確認した。また,今年度,幌延URLの地下水由来の3つ目の新種低温耐性メタン生成微生物Methanosarcina subterraneaが国際的に認定された。この成果は幌延URLが地下微生物学研究において国際的に有用なフィールドであることを示している。さらに,地層内におけるメタン生成初期プロセス,すなわち,堆積岩中の難分解性有機物の分解に関与すると考えられる嫌気性微生物について培養方法を改善し,カルチャーコレクションを拡充させている。
地下水環境研究グループでは,地層内メタンの起源およびメタン菌基質の生成プロセスに関する研究を展開した。具体的には,天北炭田猿払鉱区のボーリング孔を利用してコア中の間隙水およびガスの分析や褐炭層に付随する地下水の分析を実施し,深部の間隙水は海水起源であること,地下水のヨウ素濃度が極めて高いこと,コアや地下水中のメタンは主に微生物起源であることを明らかにした。また,釧路コールマインの白亜紀層の岩石コアから,開放系および閉鎖系間隙中のメタンを回収して炭素同位体比を測定し,閉鎖系間隙中のメタンは熱分解起源であるが,開放系間隙中のメタンは微生物起源であることを明らかにした。さらに,石炭・堆積岩中の有機物組成の分析から,酸化的風化に伴いヒューミン中の重合物質はフミン酸へと変換されることを示した。これらフィールド科学研究と並行して,褐炭と低濃度の過酸化水素との反応試験を実施し,反応時間の経過に伴う二酸化炭素等のガス湧出量は反応温度により異なること,反応試験終了時の各々の有機酸濃度やベンゼン環の含有量は反応温度の違いによらず類似すること,過酸化水素濃度はガスの湧出量や有機酸濃度とほぼ逆相関の関係を示すこと,などを明らかにした。
堆積岩特性研究グループでは,堆積岩におけるバイオメタン生産および回収における岩盤力学・地盤工学上の課題について研究を実施した。具体的には,まず,幌延地圏環境研究所各グループのこれまでの研究成果に基づいて,「バイオメタン鉱床造成/生産法-SCG method (Subsurface Cultivation and Gasification)-」を提案し,バイオメタン生産技術の具現化を図った。この中で,有機物分解時の堆積岩構造に及ぼす環境影響を解明するために,過酸化水素により堆積岩中の有機物分解を促進させ,溶媒の経時的な化学特性や堆積岩の内部構造評価を行った。また,天北炭田猿払鉱区で採取された宗谷夾炭層中の褐炭を対象として,過酸化水素水溶液への試料の浸漬実験を実施し,溶媒の化学特性や試料の形状変化について調査した。次に,マイクロフォーカスX線CT装置を用いて,過酸化水素水溶液浸漬時の褐炭の内部構造変化について経時的に調査した。これらと並行して,破壊や変形が堆積岩の浸透性に及ぼす影響に関する研究として,上記と同じ褐炭試料を用いて,蛍光X線分析による元素分析,水銀圧入式ポロシメーターによる細孔分布計測および一軸圧縮試験を実施し,褐炭の物理的性質を評価した。
地下微生物環境研究グループでは,地下のメタン生成環境の生物学的な初期状態把握のために,日本原子力研究開発機構幌延深地層研究センター地下施設(以下,幌延URLと略称)工事の進捗に合わせて主に声問層(珪質岩)の地下水試料の微生物群集構造解析を網羅的に実施し,声問層では水素を生成する微生物と水素からメタンまたは酢酸を生成する微生物が高頻度に存在することを明らかにした。また,原位置を模擬した培養モデルを用いて幌延URLから採取した地下水の長期培養試験を行い,上記の水素を基質として酢酸あるいはメタンを生成する微生物の培養が可能であることを確認した。また,今年度,幌延URLの地下水由来の3つ目の新種低温耐性メタン生成微生物Methanosarcina subterraneaが国際的に認定された。この成果は幌延URLが地下微生物学研究において国際的に有用なフィールドであることを示している。さらに,地層内におけるメタン生成初期プロセス,すなわち,堆積岩中の難分解性有機物の分解に関与すると考えられる嫌気性微生物について培養方法を改善し,カルチャーコレクションを拡充させている。
地下水環境研究グループでは,地層内メタンの起源およびメタン菌基質の生成プロセスに関する研究を展開した。具体的には,天北炭田猿払鉱区のボーリング孔を利用してコア中の間隙水およびガスの分析や褐炭層に付随する地下水の分析を実施し,深部の間隙水は海水起源であること,地下水のヨウ素濃度が極めて高いこと,コアや地下水中のメタンは主に微生物起源であることを明らかにした。また,釧路コールマインの白亜紀層の岩石コアから,開放系および閉鎖系間隙中のメタンを回収して炭素同位体比を測定し,閉鎖系間隙中のメタンは熱分解起源であるが,開放系間隙中のメタンは微生物起源であることを明らかにした。さらに,石炭・堆積岩中の有機物組成の分析から,酸化的風化に伴いヒューミン中の重合物質はフミン酸へと変換されることを示した。これらフィールド科学研究と並行して,褐炭と低濃度の過酸化水素との反応試験を実施し,反応時間の経過に伴う二酸化炭素等のガス湧出量は反応温度により異なること,反応試験終了時の各々の有機酸濃度やベンゼン環の含有量は反応温度の違いによらず類似すること,過酸化水素濃度はガスの湧出量や有機酸濃度とほぼ逆相関の関係を示すこと,などを明らかにした。
堆積岩特性研究グループでは,堆積岩におけるバイオメタン生産および回収における岩盤力学・地盤工学上の課題について研究を実施した。具体的には,まず,幌延地圏環境研究所各グループのこれまでの研究成果に基づいて,「バイオメタン鉱床造成/生産法-SCG method (Subsurface Cultivation and Gasification)-」を提案し,バイオメタン生産技術の具現化を図った。この中で,有機物分解時の堆積岩構造に及ぼす環境影響を解明するために,過酸化水素により堆積岩中の有機物分解を促進させ,溶媒の経時的な化学特性や堆積岩の内部構造評価を行った。また,天北炭田猿払鉱区で採取された宗谷夾炭層中の褐炭を対象として,過酸化水素水溶液への試料の浸漬実験を実施し,溶媒の化学特性や試料の形状変化について調査した。次に,マイクロフォーカスX線CT装置を用いて,過酸化水素水溶液浸漬時の褐炭の内部構造変化について経時的に調査した。これらと並行して,破壊や変形が堆積岩の浸透性に及ぼす影響に関する研究として,上記と同じ褐炭試料を用いて,蛍光X線分析による元素分析,水銀圧入式ポロシメーターによる細孔分布計測および一軸圧縮試験を実施し,褐炭の物理的性質を評価した。