H-RISE 公益財団法人北海道科学技術総合振興センター 幌延地圏環境研究所

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幌延ライズとは
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H-RISE 幌延地圏環境研究所
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平成25年度

 第4フェーズでは,次の2項目を研究目標としている。すなわち,地層内メタン生成に関しては,珪質岩・褐炭層等におけるメタンの生成プロセス・貯留能・地中移行特性に関する評価手法を検討し,原位置モデルの開発に資するパラメータを抽出することを目標とし,CO2の地中固定化に関しては,CO2の生物固定に活用可能な多様な有用微生物を獲得し,CO2の貯留対象地質である珪質岩・褐炭層の空隙構造や地球化学的特性を把握することを目標としている。
上記目標を達成するために,地下微生物環境研究グループ・地下水環境研究グループ・堆積岩特性研究グループのそれぞれにおいてフィールド科学から要素技術開発までの複数の研究課題を設定して研究を実施してきた。特に,これまでの研究実績から,地層内メタン生成の研究に進展が期待されたことから,平成25年度は地層内メタン生成の研究に重点をおいて研究を実施することとした。平成25年度の研究の概要は以下のようである。
地下微生物環境研究グループでは,メタン生成微生物およびメタン生成基質生成微生物の探索・評価,地下微生物群衆構造の調査およびCO2固定微生物の探索・評価に関する研究を実施した。今年度はJAEA地下施設の350m坑道から稚内層の岩石および地下水の採取と,天北炭田猿払鉱区内の地下200m級の試錐調査からの未風化褐炭の採取が可能となり,これら試料を用いた研究の展開が計られている。また,幌延の地下深部で最もメジャーな存在であった新種メタン生成微生物の性質の解明を試みるとともに,地層内の未利用有機物のメタン化における初期プロセスとして,微生物による堆積岩中の難分解性有機物の分解と構造変化に関する研究を実施した。さらに,地下水環境研究グループと共同で,希薄過酸化水素による堆積岩中の難分解性有機物の分解に関する研究を展開した。
地下水環境研究グループでは,メタン生成微生物の基質生成メカニズムの解明,地中貯留に関連した地球化学に関する研究を実施した。メタン生成微生物の基質生成メカニズムの解明に関しては,幌延町周辺の第四系および新第三系の地層中に胚胎する溶存メタンの起源を明らかにするために,これら試料の地球化学的分析を実施した。また,本年度導入した新たな分析装置により,地下水中の水素濃度を定量化するとともにメタン生成微生物の代謝活動との関係を分析した。さらに,石炭を含む種々の堆積岩について含有する腐植物質組成を分析し,堆積岩中の有機物の組成に及ぼす風化や熱水変質の影響を評価した。これら研究と並行して,地層中の有機物からメタン生成微生物が利用可能な低分子量有機酸に変換する方法として,特に,過酸化水素・溶存酸素などによる堆積岩中有機物の酸化反応(分解)に注目した一連の研究を展開した。また,キレート剤による有機物溶出に関する研究も実施している。さらに,CO2地層固定に関する基礎研究として,カルサイトの過飽和度とメタン生成経路の関連性について考察を加えた。
堆積岩特性研究グループでは,バイオメタン回収およびCO2固定化を実現させる上での岩盤力学・地盤工学の課題として,堆積岩の間隙特性の調査,破壊や変形が堆積岩の浸透性に及ぼす影響に関する研究を実施した。堆積岩の間隙特性としては,褐炭を対象として,物理的性質を評価するとともに,マイクロフォーカスX線CT観察により飽和・乾燥過程における内部構造の変化を明らかにした。また,電子プローブマイクロアナライザー,蛍光X線分析により試料の構成元素を分析した。さらに,天北炭田猿払鉱区における試錐調査により採取された褐炭試料を用いて,種々の物理定数とともに強度・変形特性を調査した。