北海道科学技術総合振興センター
H-RISE 幌延地圏環境研究所
〒098-3221
北海道天塩郡幌延町栄町5番地3
TEL 01632-9-4112
FAX 01632-9-4113
【論文公開】
「幌延の陸域深部地下環境から取得した炭酸ガス固定菌の全ゲノム解析」の論文が公開となりました。
2024年10月22日付で、「Microbiology Resource Announcement (MRA) 」の
オンライン上で公開となりましたのでお知らせいたします。
Ueno, A., Sato, K., Tamamura, S., Murakami, T., Inomata, H., Tamazawa, S., Amano, Y., Miyakawa, K., Naganuma, T., & Igarashi, T. (2024). Complete genome sequence of Thiomicrospira sp. strain V2501 isolated from 250 m below the ground level in Horonobe, Hokkaido, Japan. Microbiology Resource Announcements, 13(10).
- - - - -
概要
この論文は、日本の北海道幌延町にある地下研究施設の地下250mで採取された地下水から単離された、チオ硫酸酸化細菌Thiomicrospira sp. V2501株の完全ゲノム配列に関する論文 "Complete genome sequence of Thiomicrospira sp. strain V2501 isolated from 250 m below the ground level in Horonobe, Hokkaido, Japan" (Ueno et al., 2024) の主要なテーマと重要な知見をまとめたものです。
主なテーマ
・地下深部環境における微生物生態系の解明
・チオ硫酸酸化細菌Thiomicrospira sp. V2501株のゲノム情報に基づいた代謝特性の理解
・新規微生物種の発見と系統分類学的な位置づけ
重要な知見
1. Thiomicrospira sp. V2501株の分離と特性
2009年12月15日に幌延地下研究施設の地下250mのボーリング孔09-V250-M02から採取された地下水から単離。
炭酸ガスとチオ硫酸塩を基質として、化学合成独立栄養的に増殖可能。
2. ゲノム配列決定と解析
PacBio Sequel lle Systemを用いたロングリードシーケンスにより、完全なゲノム配列を取得。
ゲノムサイズは2,240,851 bp、GC含量は45.1 mol%。
2,135個のタンパク質コード遺伝子、9個のRNA遺伝子、43個のtRNA遺伝子を同定。
3. 系統分類学的解析
TYGSを用いたゲノムベースの系統解析により、V2501株はTms. pelophila DSM 1534Tに最も近縁であることが判明。
OrthoANIu値は83.2%であり、種レベルのカットオフ値 (95% ± 0.5%) を下回る。
結論
Thiomicrospira sp. V2501株の完全ゲノム配列の解読は、地下深部環境における微生物の代謝と生態の理解に貢献する重要な成果です。本研究により得られたゲノム情報は、V2501株の化学合成独立栄養メカニズムの解明や、地下深部環境における炭素・硫黄循環における役割の解明に役立つと期待されます。また、系統解析の結果は、Thiomicrospira属の多様性と進化に関する新たな知見を提供するものです。
データの利用可能性
すべてのデータは、16S rRNA遺伝子についてはアクセッション番号AB634592、Sequence Read Archive (DRA)、BioSample、BioProjectについてはそれぞれDRA017671/DRR522933、SAMD00726318、PRJDB17264でNCBI/ENA/DDBJに登録されています.